1.ローズハルマン工科大学とは

ローズハルマン工科大学はアメリカのインディアナ州テレホートに位置する。インディアナ州は人口で言えばアメリカで17番目、テレホートはその中で15番目に位置する町である。大学は繁華街から車で20分程度の距離に位置している。学生数は約2000人ほどであり、アメリカの工科大学ランキングで24年連続1位を獲得している。少人数のクラスできめ細やかな指導が行われており、教授も学生からの質問を歓迎している。

2.授業

私は英語の授業を二つと、プログラミングの授業を一つ履修した。読み書きの方の英語の授業では、記事を読み問題に答えたり、要約したり、毎週末にエッセイを書いたりした。基本的にどの課題でも教授からの指導や添削が入るため、学習を進めやすい。話すこと聞くことの授業では、グループでの対話、自らの経験であったり、主題に対する意見を交換しあったりした。中国人学生の数がかなり多く、かなり流暢に英語を使いこなしているが、そこら辺は仕方のないことと割り切って、発言をしていかなければならない。プログラミングの授業では最後にチームでの開発プロジェクトがある。積極的にコミュニケーションを取らないと、認識のずれが発生してしまい、開発にあたっての障害となってしまうため、こまめにやり取りをしなければならない。

3.生活

ほとんどの一年生と交換留学生は、寮に滞在することになる。寮には数種類あり、その寮によって雰囲気がかなり違う。ハリーポッターみたいなものだと思えば近いだろう。基本的にはルームメイトや、同じ階層に住んでいる他学生と仲良くやっていくことになる。寮によっては夜遅くまで騒がしい場合もあるが、そこら辺は運なので、あきらめたり静かにするように求めたりするのがいいだろう。寮は澳博集团に事欠かない。毎週土曜の夜に、同じ階層の学生とご飯を食べにいく機会がある。フロアディナーと呼ばれている。他にもアニメを同時視聴したり、寮対抗のスポーツ大会があったり毎日何かしらが起きている。できる限り参加してみるといいだろう。

あなたの留学の目的はなんだろうか。語学力の向上、異文化の体験、未知のものへの挑戦、もしくはただ単に海外に行ってみたいだけかもしれない。結局のところなんだって構わないと私は思う。なんにせよ目標を持って海を渡ることは望ましいことだが、渡ってしまえばアメリカのその広大さの前でさらに別な目的が生まれてくるだろう。一緒に留学していた東北大生は、ジムで筋トレを始めた。彼の肉体は成長を続けている。私はピアノを始めた。辿々しいながらもトルコ行進曲くらいは弾けるようになった。もちろん、渡航前に持っていた目的も忘れてはいない。私が言いたいのは、あらかじめ目標を定めるということは留学に踏み込むだけの勇気を与えるものであって、渡航してしまえばもっと沢山の目的、勇気を振り絞らなければいけない問題が出てくるということだ。それは飲食店できちんと注文できるようにするというような生活レベルの小さいものであるかもしれないし、帰国までの間に恋人を作るという大きなものかもしれない。ちょっと具体例を挙げてみよう。私が留学中に遭遇した問題とそれにどう対応したかだ。どうにもならなかったことは紹介しない。ずっと一緒にいたシンガポールの中国人の英語が、最後まで聞き取れるようになれなかったことは仕方のないことだ。でもコミュニケーションは取れていた。

ローズハルマンの秋学期には約四日間の休みがある。何かをするには短いが、何もしないには長すぎるというあれだ。私はこの期間にシカゴへ行った。シカゴはローズハルマンのあるテレホートから元も近い大都会であるが、車で約4時間という距離にある。会津から東京までをバスで行くような感覚だ。ただ、バスも電車も使うことはできない。バス停や駅までには相当距離があるし、ダイヤの都合上午前中にシカゴに着くことが難しいからだ。残された手段は誰かの車に乗せてもらうというものだけになるが、私の周りにいた友人の中で、車を持っていてなおかつシカゴに行くという人はいなかった。ここで諦めて、誰もいないキャンパスで数日過ごすと言う選択をしてもよかったのだが、もう少し粘ることにした。まず、同じ寮に住む学生、おそらく30人程度に聞き、バディプログラムの学生及びその方の友人、初日に出会ったトルコ人学生及びその友人にも聞いた。結果はゼロ。ここで諦めて、4日連続でテレホートの繁華街をブラブラする選択をしてもよかったのだが、それをするにはテレホートはまとまり過ぎている町だったから、もう少し粘ることにした。同じ英語の授業をとっている学生が友人の車でシカゴに行くというので同乗させてもらえないか聞いてみた。もう席が埋まってしまっているという返信がきた。どうにもうまくいかないことばかりである。最終的に、レンタカーでシカゴに行く友人を見つけたので乗せてもらうことになった。利用可能なレンタカーがないということで、この選択肢も消えた。いろいろあったものの、出発前日の午後にその友人が買った車が届いたのでどうにかなった。

この結末に至るまでにたくさんの人と話をして、たくさんの人とチャットをした。たくさん断られたし、たくさん苦しんだ。結構な無茶だったと思うし、かなり図々しい動きだったと思う。一緒にいた日本人留学生からはどうしてそんなにシカゴにこだわるのか、と言われたが、10ヶ月滞在するその学生と違って私は3ヶ月の滞在で、旅行できるような休みはこの秋休みを含めて2回しかない。シカゴは4時間の距離にあるのではなく、飛行機の移動を含めて十数時間の距離にある。このタイミングを逃したらそう簡単に行ける場所ではない。留学もきっと同じことだろう。社会人になってからでは、時間も機会も今に比べればかなり減っている。取りたい授業がないからや、なんとなく怖いからという理由だけで敬遠していいのだろうか。アメリカはアメリカというその4文字だけで表しきれるような場所ではない。実際に行ってみなければ、何も理解できない場所である。むしろ実際に行った結果、その広大さがあなたをさらに困惑させるかもしれない。留学とは、大学の講義を英語で受けることだけを意味しない。その国の文化、街並み、みたことのないネオンサインがあなたの世界を広げ、時にはあなた自身を苦しめるだろう。しかし、それこそが留学だと私は思う。その苦しさの先に何が待ち受けているかは、完全にあなた次第である。苦しさの先にまた苦しさがあるかもしれないし、経験したことのない楽しさが待っているかもしれない。なんにせよ、その苦しさも楽しさも、留学という選択をした先に待ち受けていることを忘れてはならない。

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